「・・・・・・・・・・・・。」



あー・・・・・・、どうしよう。いや、どうもしなくていいんだけど。でも、やっぱ、どうかしたい。何かしらの行動はしたい。・・・・・・つーか、むしろ。アイツをどうにかしてやりたくなる。



「な〜に見てんだ、赤也っ!!」

「うわっ!!ま、丸井先輩・・・・・・!」



俺がボーッとしているところに、丸井先輩がガシッと俺の首に腕を回した。
首が締まるんじゃねぇかっていう焦りと、先輩の質問自体に対する焦りとで、あんま周りが見えてなかったけど・・・・・・。



「何見てるかはわかるだろ。」

「ジャ、ジャッカル先輩まで・・・・・・!」



丸井先輩の横には、ジャッカル先輩もいた。



「ま、たしかにジャッカルの言う通りだな!どうせ、またのこと、見てたんだろぃ?」

「なんで、そんなことを先輩に言わなくちゃなんないんスか!」

「そう怒るなって!」

「とりあえず。腕、離してもらえないっスか・・・・・・?」

「おお、悪ぃ悪ぃ。」



・・・・・・ったく。と思いながら、ようやく離れてくれた丸井先輩、それから隣にいたジャッカル先輩を見ると、2人でニヤニヤとしながらこっちを見ていた。
うぜぇー。



「で?可愛い可愛いちゃんを見ながら、どんなことを考えてたんだ?言ってみろぃ。」

「そりゃ、そのまま可愛いとでも思ってたんじゃねーの?」

「おうおう、若いねぇー!でも、そんなことしてサボってっと、真田に殴られちまうぜ?」

「な・・・・・・っ!サボってなんかないっスよ!!ちょっと・・・・・・、見てただけっス。」

「うん、それで?何考えてたんだ、って聞いてんだけど?」

「だから、なんで、そんなこと・・・・・・!!」

「さぁ〜って、ジャッカル。早く真田に言って来てくれるか?赤也が部活中ボーッとしてるぜぃ、ってよ。」

「俺かよ!・・・・・・まぁ、いいぜ。」

「わかったっス!言えばいいんでしょ、言えば!!・・・・・・ただ、どうしたらいいのか、って考えてたんスよ。」

「ふ〜ん・・・・・・。じゃ、告れば?」

「無理っスよ。アイツ、俺がどんだけ言っても、気付いてないっスもん。」

「たしかに・・・・・・。俺たちが見る限り、お前がのことを好きだって言うのは明白なのにな。」

「とは言っても、やっぱ告白しかねぇだろぃ?だから、いつもと違う方法で言ってみな。」



それがわからないんスよ、なんてことを言おうとした瞬間。真田副部長に見つかっちまって、俺たち全員が怒られちまった。・・・・・・何だよ。結局怒られんなら、先輩たちに話さなきゃよかった・・・・・・。
でも、言ってしまったもんは言ってしまったんだから、それを利用しない手はない。今度は、俺が自ら、部活の休憩時間に丸井先輩の所へ向かった。



「ん?何か用か、赤也ー。」

「さっきの話の続きっス。いつもと違う方法って、具体的にはどうしたらいいと思います?」

「あぁ、それな。・・・・・・それは自分で考えろぃ。」

「なっ・・・・・・!俺にムリヤリ話させといて、それは無いんじゃないっスか?!」

「わかった、わかった。ちょっとは考えてやるよ。そうだなー・・・・・・。言葉だけじゃなく、行動も起こしてみる、とか?」

「行動?」

「悪いが、どういう行動を取ればいいか、までは助言してやらねぇぞ?そこは自分で考えねぇとな。」



・・・・・・何か、あんまり解決策になってない気がする。でも、丸井先輩の言うことも正しいとは思う。



「そうっスね・・・・・・。どうも。」

「いやいや。困った後輩を助けんのが先輩の役目だろぃ?」



なんて偉そうに言ってるけど、困らせてんのは先輩たちでもある。



「よし。じゃ、この休憩を利用して、今から告って来い!」

「は?!!何言ってんスか?!」

「安心しろ。セッティングも全部、俺がしてやっから・・・・・・。だから、ここで待っとけよー!」



俺が呼び止めるのも無視で、丸井先輩はどっかへ行ってしまった。・・・・・・どっか、って言っても、の所だろうけど。
って、ホント、余計困るんスけど!!
だからって、やっぱり待っとかねーと、もし本当にが来たら悪いし・・・・・・。マジで、何してくれちゃってるんスかね、丸井先輩は!

そうこうしている内に、がこっちに向かって来んのが見えた。
・・・・・・覚悟、決めるしかねぇのか。



「赤也くん、どうしたの?何か話があるみたいだ、って丸井先輩から聞いたけど・・・・・・。」



少し不思議そうに聞いてきたは、相変わらず可愛い。そんなを見てたら、素直に好きだって思えるから。それをただ口に出すだけでいいのか、って思えた。



「おう、大事な話。よく聞いとけよ?」

「?・・・・・・わかった。」

「俺、のことが好きなんだ。」

「うん、私もだよ?」



いつも通りニッコリと返事をした
あー、違う。わかってない。



「そうじゃなくって。えっと、俺は特別にお前が好きなんだよ。・・・・・・わかる?」

「私もそうだけど?」



相変わらずの笑顔で答える
違う、絶対違う。



「じゃあ、丸井先輩たちは?」

「もちろん、先輩たちのことも大好きだよ。」



ほらな。やっぱり、わかってない・・・・・・。そう思うと、自然とため息が出てきた。



「赤也くん?ご、ごめん・・・・・・。私、何か変なこと言ったかな??」

「いや、そうじゃねぇけど・・・・・・。」

「そうじゃないけど、私の所為ではあるんだよね??ごめんね?私、赤也くんにそんな困った顔させたくないのに・・・・・・。」



すごく心配そうに、すごく申し訳なさそうに、は言った。
・・・・・・ホント可愛すぎ。
俺は思わず手を伸ばし、そのままをギュッと抱きしめてしまった。



「俺だって、にそんな悲しそうな顔、させたくねぇよ。・・・・・・大好きなのに。」

「赤也くん・・・・・・?!」

「もうこれ以上、何て言えばいいのかわかんねぇけど・・・・・・。とにかく、俺は本当に好きなんだ。」

「え〜っと、もしかして・・・・・・・。付き合って欲しい、とかそういう告白的な意味ってこと?」



・・・・・・あれ?!伝わってる??!



「そ、そう!そういうこと!!」

「・・・・・・本当に?」

「当たりめぇーじゃん!こんなことでウソつくかよ。」



必死に伝えようとするあまり、思わず腕にも力が入っちまって、俺はもっとをギューッとしてしまっていた。
・・・・・・でも、ま、結果オーライだったんだよな?



「嬉しい・・・・・・。」



俺の腕の中で、がそう呟いたのが聞こえたってことは。
もちろん、後から思い返せば、の話だけど。そんときは、俺も冷静じゃなかったから、そこまで考える余裕はなかった。



「うれしい??・・・・・・ってことは!!も、ってこと?!!」

「うん・・・・・・。」



恥ずかしがっている声が聞こえ、急いでの表情も確認しようとすると・・・・・・は俯いてて、よくわかんなかった。でも、たぶん、これは照れてるから、ってことだよな?!



「じゃ、じゃあ・・・・・・付き合ってくれんの??」

「・・・・・・私でよければ。」

「よっしゃぁぁぁー!!!!」



思わず叫んじまって、また俺はをギューッと抱きしめた。



「赤也くん・・・・・・、恥ずかしいんだけど・・・・・・。」

「うん、気にすんな。」

「えぇっ?!気にするってば・・・・・・!!」

「おぉ?早速イチャついてんのか?」



そんな中、俺をけしかけた張本人、丸井先輩と、ついでにジャッカル先輩も来た。
何だよ。邪魔すんなよな!おかげで、が余計に恥ずかしがってる。・・・・・・可哀相だから離してやるべきか、それとも、この可愛いを誰にも見せないよう抱きしめ続けるべきか。とか考えている間も、俺はずっとを抱きしめてるわけで。つまり、結果としては誰にも見せない方を取ったことになる。
でも、ま、いいか。やっぱり誰にも見せたくねぇし。それに、には悪いけど、俺は先輩らが来る前から離すつもりなんてなかったし。



「何の用っスか・・・・・・?」

「おい、アドバイスしてくれた先輩に対して、その態度はねぇだろぃ?」

「アドバイス?」

「行動も起こしてみたらどうだ、ってやつ。」

「あぁ・・・・・・。でも、正直、それを役立てた覚えは・・・・・・。」

「無いとは言わせねぇぜ・・・・・・?現に今、行動を起こしてるんだからな。」



そう言われて、俺はあらためて自分の姿を見ようとした・・・・・・けど、先にの姿が目に入った。
・・・・・・あぁ、この状態のことか。



「そうされたからこそ、も気付いたんだろぃ?」

「え?あ、あの・・・・・・。」

「あぁ、悪い。その状態で、俺と会話なんてできねぇよな。」

「当たり前じゃないっスか。今、俺らはお互いの気持ちを知って、幸せを噛みしめてるんス。先輩、邪魔しに来たんスか・・・・・・?」

「あ、赤也くん・・・・・・!」

「いや、邪魔しに来たつもりはねぇんだけど。やっぱり、心配だろぃ?な、ジャッカル!」

「そこで俺に振るなよ。俺はお前に連れて来られただけで・・・・・・。」

「じゃあ、この可愛い後輩たちの恋の行方が心配じゃなかった、って言うのかよ?」

「そういうわけじゃねぇけど、なんか嫌な予感が・・・・・・。」



ジャッカル先輩が何かを言いかけたとき、もう1つの声が聞こえてきて、ジャッカル先輩はやっぱり・・・・・・、という顔をしていた。



「何をしている、お前たち?!休憩中とは言え、部活中にそのようなことを・・・・・・!!」



・・・・・・また真田副部長かよ。さっきから、いいとこで邪魔されるんだよな。
そう思いながらも、俺は大人しくを放すことにした。その方が話も早く終わりそうだからな。それに。これからは、いつでもを抱きしめられるし!
は、と言うと。慌てて俺から離れると、真田副部長に頭を下げまくっていた。・・・・・・そんなことしなくていいのに。



「す、すみません!」

「違うっスよ、真田副部長。は何も悪くないっス。俺が勝手にしたことなんで。」

「わかっている。はひどく困っているようだからな。よって、赤也!グラウンドを50周してこい!!」

「ういーっス。」

「赤也くん・・・・・・。私だって・・・・・・。」

「いいって、いいって。事実なんだし。・・・・・・それでも俺に悪いって思ってくれんなら、あとでまたギューーーッてさせて?」

「何をしている?!早く行かんか!!」

「へ〜い。」



俺はその場を離れながら、に向かってウィンクをすると、は照れながらも、わかったと言う風にコクンと頷いてくれた。あぁ、もうマジ可愛い・・・・・・!!抱きつくだけじゃすまなくなるぞ?
なんてことを思っていると、後ろでまだ真田副部長の声が聞こえた。



「面白がって見ていたお前たちもお前たちだ!!丸井、ジャッカルはグラウンド30周だ!」

「俺、関係ねぇのに・・・・・・。」

「何か言ったか、ジャッカル!」

「諦めろぃ、ジャッカル。」

「わーってるよ・・・・・・。」



悪い予感、当たったみたいっスねー、ジャッカル先輩!ごしゅーしょーさまっス!!













 

とにかく、ジャッカルさんには可哀相な思いをさせてしまいます(笑)。ごめんなさい、ジャッカルさん!もちろん、愛ゆえの待遇ですから!!その苦労人体質が大好きです!(笑)
そして、後輩を心配する姿も素敵です!これは丸井さんにも言えることですね。OVAで、ジャッカルさんと丸井さんが切原くんを気にかけるシーンがあったので、そういうイメージです。

と言うか、他校の先輩キャラもそうだとは思うんですけど、立海の場合は3年生が主で、切原くんだけが2年生なので、余計に皆さんが切原くん思いだよなーと感じますね。そんな、厳しいのに仲良しな立海が大好きです!
という話を書きたかったのではなく(笑)。今回は、思わず行動に出ちゃう切原くん、ってのが書きたかったのでした!

('10/08/12)